夫婦としての実質を有しながら、婚姻届を提出していないために法律上の夫婦と認められない関係を内縁といいます。
亡くなった方にこの内縁の妻がいた場合、相続においてこの方はどのように扱われるのでしょうか?
今回は、相続における内縁の妻の扱いについて考えていきます。
内縁の妻は相続人になれない?
婚姻届を提出している法律婚の妻には様々な優遇措置があります。
例えば、税制面では、配偶者が配偶者控除を受けることができるので家計全体で節税が可能です。
また、相続においても、無条件に相続人となれますし、法定相続分も相続財産の1/2となります。
相続財産の最低保障額である遺留分も設定されています。
一方、内縁の妻には、相続権はありません。
従って、どんなに長い期間、被相続人と一緒に暮らしたとしても、一部の例外を除き、被相続人の遺産を受け取ることはできません。
内縁の妻が被相続人の財産を受け取ることができる特例
内縁の妻が被相続人の遺産を受け取ることができるのは、
- 被相続人が遺言で内縁の妻に対する遺贈を指定している場合
- 相続人がいない又は相続人の全員が相続権の放棄をした場合
に限られます。
1,被相続人が遺言書で指定した場合
被相続人が、遺言書で内縁の妻に対して遺産を分け与えることを記している場合には、遺贈として内縁の妻に帰属されます。
なお、理論的には、遺留分を有する法定相続人(配偶者、子、直系尊属など)がいる場合でも、遺産の全部を内縁の妻に遺贈するという遺言も可能です。
しかし、その場合には、それらの法定相続人から遺留分侵害による減殺請求権を行使される可能性が高いです。
よって、現実的には、遺言によって内縁の妻に与えることができる遺産は、相続人の遺留分を侵害しない範囲に限られます。
2,相続人がいない又は相続人全員が相続放棄をした場合
相続人が1人もいない場合又は相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の内縁の妻は、特別縁故者への財産分与制度を利用して、遺産を受け取ることができるかもしれません。
相続人の不存在が確定すると、被相続人と生計を同じくしたいた者や被相続人の療養看護に努めた者は、家庭裁判所に対して財産分与の申立てをすることができます。
そして、申立てを受けた家庭裁判所は、事実関係の調査を行い、財産分与をすることが相当と認めた場合には、特別縁故者に対する財産分与の決定します。
内縁の妻であれば、被相続人との生計同一関係や、被相続人の療養看護に努めた事実があるはずですから、特別縁故者に該当する可能性は高いです。
よって、相続人の不存在が確定した場合には、特別縁故者としてこの制度に申し込んで、家庭裁判所の承認を得れば、遺産を受け取ることができると思われます。
まとめ
今回は、相続における内縁の妻の扱いについて考えていきました。
相続においては、内縁の妻は法的な妻より遥かに立場が低いものとなっております。
内縁の妻に遺産を残す方法は、特別な場合を除き、遺言書のみとなっております。
遺言書を使っても遺産すべてを内縁の妻に残すのは難しいので、やはり亡くなる前に法的な妻になっておくことをオススメします。