親の遺産を巡って、兄弟姉妹が争うことはよくあります。
以下では、相続をめぐって起こり得るトラブルの種類や、相続をめぐるトラブルを回避するためには、どのような方法があるかについて考えてみます。
トラブルがおこりやすい状況
特に以下の場合が相続トラブルが起こります。
- 相続の寄与分が関わってくる場合
- 居住用建物が関わってくる場合
- 相続登記を忘れてしまった場合
それぞれ見ていきましょう。
1,相続の寄与分が関わってくる場合
例えば、父がなくなり、相続人が妻と長男及び次男だったとします。
法定相続分だと、父の遺産は、妻が2分の1、長男が4分の1、次男が4分の1です。
ところで、長男は、父が亡くなるまで父の介護をしていました。
一方、次男は高校を卒業後は家を離れ、父の介護にはほとんどノータッチでした。
長男は、自分が父の介護をしたのだから、何もしない次男よりも、父の遺産をより多く受け取って当然だと考えています。
しかし、遺産分割の話し合いになると、次男が法定相続分を自分によこすように言ってきました。
心情的には、父の介護をした長男と何もしなかった次男では、長男の方が遺産の受け取り分が多くて当然だという気もします。
しかし、平等な取り分を要求する次男の主張も、法律ではそう規定しているから無視もできません。
このように、長男が寄与分を要求してくると、相続トラブルが発生してしまうのです。
そこで両者が対立し、トラブルが発生します。
2,居住用建物が関わってくる場合
特に、父の遺産が居住用の土地と建物のみの場合、法定相続分どおりに遺産を分割するとしたら、どうなるのでしょうか?
居住用の土地・建物の売却した上で売却代金を配当する必要が生じます。
ですので、次男の言い分をとおすと、長男及び妻は、長年住み慣れた住居を手放さなくてはなりません。
対立が激化するのは当然です。
3,相続登記を忘れてしまった場合
また、相続開始後、遺産分割協議が整い、居住用の土地・建物を長男が相続することになったとします。
しかし、長男は、うっかり、土地・建物の登記名義を自己名義に直すことを忘れていました。
そこで、それに目を付けた他の相続人(次男)が、被相続人の遺産である土地・建物の法定相続分による相続登記を行い、その次男の持分を第三者Cに売却し、移転登記を行ったとします。
この場合には、第三者Cは、長男に対して不動産の所有権を対抗(主張)できますから、長男に立ち退きを要求したり、法外な金額で持分の買取りを要求したりできます。
実は相続人だったら誰しもが相続登記できる!
法定相続分による相続登記は、相続人だったら誰もが他の相続人の承諾を得ることなく単独で行えます。
よって、遺産分割によって土地・建物の所有権を獲得した長男が相続登記をしないでいると、このようなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
相続トラブルを防止するには?
1,遺言書を作成すること
遺言書を作成しておけば、たいていの相続トラブルは解消されます。
例えば、上記の例で言えば、父親が介護をしてくれた長男に居住用不動産を相続させるという遺言書を作成しておけば、次男が法定相続を盾に、居住用不動産の売却及び配当を要求することはありません。
2,すみやかに相続登記を行う
また、遺産分割協議や遺言書により相続分が決まったら、すみやかに相続登記を行うことです。
相続登記をしないでいると、上記の例のようなトラブルが発生します。
相続分が決まったら、きちんと登記をしておくことが、トラブル防止に役立ちます。
まとめ
今回は、相続トラブルの例と予防策についてお話しました。
相続トラブルの予防策は、なんといっても、遺言書を作成しておくことです。
確かに遺言書作成は様々な手続きが必要で面倒くさいものです。
しかし、家族間で相続トラブルが起こってしまうのは、それ以上に悲しいことです。
ですので、面倒くさがらず、遺言書を作成しておくことをオススメします。