遺産相続の際、被相続人が生前に遺言書を残していれば、相続争いが起こりにくいと言われています。
被相続人の相続に関する意思が明確になっていれば、相続人間で、被相続人の意思をめぐって争いが起こるということも少なくなります。
以下では、この遺言書について説明をしてまいります。
民法で定める遺言の方式
民法で定める遺言書の方式には、大きく分けて2種類あります。
1つは、普通方式の遺言です。
さらに、普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
もう1つは、特別方式の遺言です。
これには、死亡危急時の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言、があります。
いずれも、被相続人に生命の危険が迫るなどの特殊な事情がある場合に行う遺言の方式です。
普通方式の遺言について
今回は遺書の中でも一般的な普通方式の遺書について紹介します。
普通方式の遺言には3種類あります。
自筆証書遺言について
自筆証書遺言とは、遺言者が、書面に、全文、日付、氏名を自書し、これに印鑑を押すことにより作成される遺言のことです。
なお、自書ですから、ワープロなどで作成された遺言書は無効です。
また、印鑑は、実印である必要はなく、認印や指印でも大丈夫です。
日付については、○月吉日という日付の特定できないものは無効、長野オリンピック開会式当日のように、日付が特定できるものは有効です。
また、2人以上が同一の証書でした遺言は無効です。
相続が開始すると、自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認(遺言書の偽造、変造等がないかどうかの確認)が必要です。
公正証書遺言について
公正証書遺言とは、証人2人の立会いの下、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述します。
その口述を公証人が証書に記載します。
そして、遺言者、証人2人、公証人が、遺言の口述の内容が証書に正確に記載されているかを確認し、その旨の記載と、日付と署名押印を行います。
この手続きにより作成された遺言書は、公正証書として、相続の開始まで公証役場で保管します。
この方式による遺言を公正証書遺言といいます。
遺言の中では、偽造や変造、毀損の可能性が最も低く、一番信頼できる遺言の方式です。
相続開始後の家庭裁判所の検認も不要です。
秘密証書遺言について
秘密証書遺言の作成方法は、以下のとおりです。
まず、遺言者が遺言書を作成し、署名押印を行います。
そして、その遺言書を封じ、遺言書に用いた印鑑をもって封印を押します。
今度は、証人2人以上と公証役場に行って、公証人及び証人の前で、遺言書を提出し、これが秘密証書遺言であることを申述します。
証人と公証人が、この申述を封紙に記載し、日付と署名押印を行います。
秘密証書遺言は、相続人に知られたくないような遺言をする場合、又は、遺言をしたこと自体を知られたくない場合に有効です。
ただし、秘密証書遺言は公証役場では保管しません。
また、相続の開始後、家庭裁判所の検認を受けなくては、有効な遺言書とされません。
まとめ
今回は、相続のための遺言書の方式を3つ紹介しました。
ワープロで遺言書を書いても、無効な遺言書となってしまいますので、しっかり手続きを踏んで遺言を残すことにしましょう。