相続による義務の引き継ぎ
相続が始まると,被相続人の一身に専属するものを除いて、被相続人が有していた一切の権利義務が相続人に承継され、相続されるのは権利だけではなく義務も受け継ぎます。
つまり、プラスの資産だけではなく,マイナスの負債や債務も一緒に受け継ぐことになります。
マイナスの負債として、代表的なものは借金です。被相続人に借金があり相続すると、相続人はその借金を被相続人に代わり返済する義務が生じるのです。
相続人が複数いる場合,各共同相続人がそれぞれの法定相続分に応じて、分割された債務を負担する必要があります。
たとえば,それぞれ5分の1ずつの法定相続分の共同相続人が5人いる場合に,被相続人に2,000万円の借金があるとすると,各共同相続人はそれぞれ400万円ずつの借金の支払義務を背負うことになります。
相続における債務の対処
被相続人に借金などの負債が残っていたという場合に、その負債を必ず受け継がなければならない場合、相続人に不測の損害が発生してしまいます。
よって、民法では相続財産のうちに借金などの、債務がある場合に備えて相続人がとることができる対処法があります。
この対処法が、相続放棄や限定承認という制度となっています。
被相続人の負債と資産がどれくらいあるのかを確かめ、その調査の結果,資産が負債を上回っているということであれば,相続をしても相続した資産で負債を支払うことができるので、問題ないです。
しかし,負債の方が資産よりも多いという場合には,相続をすると負担が増えるリスクがあります。
このような場合は,相続放棄や限定承認という方法をとる必要が出てきます。
相続放棄
資産もすべて相続しないかわりに,負債もすべて相続しなくて済むという制度であり、相続そのものをしないという制度です。
限定承認
相続財産の範囲内でのみ,負債を相続するという制度です。
したがって,負債の方が資産よりも大きい場合には,相続はなされないということになり、負債の方が資産よりも大きいことが明らかな場合には,相続放棄を選択するのが通常です。
ただし、資産よりも負債の方が大きいことが明らかでない場合は,限定承認を選択することもあります。
まとめ
相続における債務の取り扱いについては、被相続人の資産と負債の金額を正確に把握することがポイントとなります。