使用貸借とは、目的物を無償で使用収益できる権利のことを言います。使用貸借には、同じく目的物の貸し借りの契約である賃貸借と比較して、様々な独特の規定があります。以下では、この使用貸借について、その相続税法上の取り扱い等について解説します。

使用貸借とは

使用貸借とは、貸主が目的物を借主に無償で貸し出し、借主が借り受けた目的物をその用法に従って使用収益を行うと同時に、通常の必要費を負担するという契約のことをいいます。通常の賃貸借契約の場合には、地代や賃借料等の対価が支払われますが、使用貸借の場合には無償である点が大きな特徴となります。

また、使用貸借は、借主が死亡すればその効力を失います。例えば、親が土地の使用貸借契約により他人の土地を使用していた場合、親が亡くなって、その子が土地の使用を引き継いだとしても、使用貸借契約は親が死亡した時点で終了します。その子が土地の使用を継続する場合には新たな使用貸借契約を締結したものとされます。

さらに、使用貸借契約は、返還時期及び使用目的を契約で定めなかった場合、貸主はいつでも借主に対して目的物の返還を請求できます。なお、賃貸借契約の場合、期間を定めなかった場合には、貸主が目的物の返還を申込んでから一定期間が経過後に返還を請求できることとなっています。

使用貸借権は原則として相続税の対象とはならない

使用貸借契約は、借主が死亡した場合に終了することになっているので、使用貸借契約で目的物を借りる権利(使用貸借権)は、借主が死亡した瞬間に消滅します。よって、使用貸借権は原則として相続の対象とはなりませんし、相続税の課税対象でもありません。

ただし、貸主が借主から扶養されることを条件に土地の使用貸借契約を締結した場合で、借主が死亡し、借主の相続人が使用貸借権とともに被相続人が有していた貸主の扶養義務も承継する場合には、例外的に、使用貸借権は相続財産となります。

また、貸主と借主の共有地上に貸主の単独所有の建物があり、借主がその土地の公租公課の全額を負担する代わりに、その建物の一部を無償使用するという使用貸借契約の借主が死亡し、借主の相続人が共有地の公租公課を負担する義務と共に使用貸借を継続する場合も、その目的となる使用貸借権は相続財産となります。

土地の使用貸借の貸主に相続があった場合について

今度は、使用貸借の貸主に相続があった場合について考えてみます。使用貸借の目的物が土地である場合、貸主が死亡しても使用貸借契約は終了しないので、貸主の相続人は使用貸借権の設定された土地を相続することになります。

この場合のその土地の相続財産評価は原則として更地評価となります。つまり、土地の設定された使用貸借権の評価額は0円ということになります。使用貸借権は、賃借権に比べて非常に微弱な権利であるので、相続財産評価の対象にならないことになります。

ただし、かつては、土地に使用貸借契約を締結した場合には、貸主から借主に対して借地権を贈与したものとみなして、その使用貸借権を借地権として評価した上で、贈与税を課税していた時期がありました。

よって、相続財産評価の対象となる土地に使用貸借契約が設定された時期が古ければ、例外的に、その使用貸借権を借地権とみなしてその評価額を更地価額から控除した価額が、使用貸借権が設定された土地の相続税評価額となる場合もあります。

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