相続税対策として、貸家建付地を利用する方法があります。
ここで、貸家建付地とは、第三者に賃貸されている建物の敷地となっている土地のことを言います。この貸家建付地を利用した相続税対策は、非常に分かり易い有効な方法です。
以下では、それについて解説します。
貸家建付地の相続財産評価について
相続財産評価において、貸家建付地の評価額は、更地の評価額を1とすると、(1−借地権割合×借家権割合)となります。
よって、例えば、貸家建付地の所在場所の借地権割合が70%、同じく借家権割合が30%とすると、その割合は、1−70%×30%=79%となります。
従って例えば、貸家建付地の更地としての評価額を1,000万円とすると、その貸家建付地の評価額は、790万円となります。貸家建付地を利用した相続税対策は、更地評価と貸家建付地の評価のこの差を利用して行います。
借地権割合と借家権割合について
借地権割合とは、土地の自用地としての評価に対する借地権の割合のことを言います。
この借地権割合は、国税庁で公表している路線価図や評価倍率表において、そこで設定されている路線価又は適用地域ごとに、30%〜90%の範囲で10%ごとに定められています。
例えば、借地権割合が70%の地域では、ある土地に設定されている借地権の価額はその土地の自用地としての評価額の70%となります。
また、借地権が設定されている土地の評価額は、その土地の自用地としての評価額から借地権価額を控除した価額となります。
一方、借家権割合とは、建物が賃貸に出されている場合に、その建物が自用建物である場合の価額に対するその賃借権の価額の割合のことをいいます。そして、賃借権が設定されている建物の評価額は、その建物の自用建物としての評価額から、賃借権価額を控除した額になります。
なお、借地権割合については、評価対象地の所在場所によって、30%から90%の範囲においてそれぞれ異なりますが、借家権割合については全国ほぼ一律に30%となっています。
貸家建付地を利用した相続税対策の具体例について
Aさんが1億円の現金を有していたとします。Aさんの相続人が子Bさん1人だとすると、Aさんの財産を相続したBさんに賦課される相続税額は、課税遺産総額が1億円−基礎控除額(3,000万円+600万円×1人)=6,400万円、相続税率は30%なので、1,920万円となります。
さて、Aさんがその現金1億円を用いて、5,000万円の土地を購入し、その土地の上に5,000万円で建物を立てその建物を第三者に賃貸したとします。その後、Aさんに相続があり、唯一の相続人であるBさんがこの貸家建地を相続したとします。
この場合、まず建物については、建物の相続財産評価は建築費の60%〜70%となりますから、
仮に60%とすると建物の自用地としての評価額は3,000万円となります。
そして、この建物は賃貸されていますから、借家権割合の30%を控除すると、この建物の評価額は、3,000万円×(1−30%)=2,100万円となります。
次に、土地についてですが、まず、土地の相続財産評価額は時価の80%となりますので、Aさんが購入した土地の評価額は5,000万円×80%=4,000万円となります。
次に、この土地の所在地の借地権割合を70%とすると、この貸家建付地の評価額は(1−借地権割合×借家権割合=1−70%×30%=)79%となります。
よって、貸家建付地の評価額は、4,000万円×79%=3,160万円となります。これと、先に計算した建物の価額と合算すると、2,100万円+3,160万円=5,260万円となります。この財産をBさんが相続したとすると、Bさんには、(5,260万円−基礎控除額3,600万円=1,660万円)×15%=249万円の相続税が課税されます。
Aさんが現金で1億円を保有していた場合のBさんの相続税は1,920万円、一方、Aさんがその1億円の現金で土地と建物を購入し、建物を第三者に賃貸に出した場合のBさんの相続税は、249万円です。差し引きで1,671万円の節税となります。