農業相続人とは、農業相続人とは、相続により農地を取得した人のことをいいます。
この農業相続人が農地を相続した場合には、一定部分の相続税の納税が猶予されます。
農業相続人の課税の特例が生まれた背景
都市部の農地などでは、農業を営んでいる限りにおいては到底実現し得ないような高い土地評価額が付けられることがあります。
そのような農地を相続により取得し農業を営む場合には、不当に高い相続税を支払うことになります。
このため、相続税を支払うために農地を手放さなければならなくなる農業経営者が続出しました。
これに対する対策として、営農を継続する目的で農地を相続した農業相続人に対しては、
本来の相続税額から、農地とした評価した場合の土地評価額に対する相続税額を差し引いた金額を、納税猶予とすることにしました。
農業相続人の課税の特例の具体例
例えば、農業を営むAさんが亡くなり、長男のBさんがAさん所有の農地を相続したとします。
Bさんは、Aさんの農業を引き継ぐ気持ちで、相続税の納付期限までに亡くなったAさんの農地で農作業を開始しておりました。
しかし、Aさんの農地は、都市郊外の宅地開発が進んでいる地域に所在し、土地評価額が高く1億円だったとします。
この場合、相続財産がこの農地のみ、法定相続人がBさんのみと仮定すると、相続税額が
(1億-[3,000万円+600万円×1])×0.3=1,920万円
です。
さて、Aさんの農地は、宅地並みの評価で1億円の値が付きましたが、農地として評価した場合には、5,000万円の値が付くとします。
すると、相続財産を農地として評価した場合の相続税額は、
(5,000万円-[3,000万円+600万円×1])×0.15=210万円
となります。
そして、宅地並み評価の場合の相続税額1,920万円から農地として評価した場合の税額210万円の差額1,710万円が、農業相続人の課税の特例による納税が猶予される金額となります。
猶予された相続税額が免除される??
なお、この特例は、基本的には納税猶予ですから、農業相続人が農業を廃業した場合、農地を売却又は譲渡した場合には、猶予されていた納税額を支払わなくてはなりません。
その一方で、以下の要件に該当する場合には、猶予されていた納税額は免除されます。
- 特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
- 農業相続人が、一定の方法によって農業の後継者に生前一括贈与をした場合
- 特例の適用を受けた農業相続人が、相続税の納期限後20年間農業を継続した場合
農地の貸付けでも適用される
なお、農業相続人の課税の特例は、相続人が営農する場合だけでなく、相続人が特定貸付けを行なった場合にも適用されます。
特定貸付けとは、
- 農地中間管理事業
- 農地利用集積円滑化事業
- 利用権設定等促進事業
に基づいて、農地を他人に貸付けることをいいます。
まとめ
農業相続人とは、相続により農地を取得した人のことをいいます。
農業相続人は、農業を続けている限り、払うべき相続税の一部を後日に猶予することができます。
また、猶予された相続税額が免除される場合もありますので、相続税対策として頭に入れておきましょう