婚姻届を提出しないで夫婦同様の関係を持つことを事実婚や内縁といいますが、この内縁の妻や夫は相続においてどのように扱われるのでしょうか。以下では、この問題について解説します。
被相続人に法定相続人がいる場合の内縁の妻又は夫の扱いについて
亡くなった被相続人に法律上の配偶者等の法定相続人がいる場合には、内縁の妻又は夫が被相続人の療養看護にいくら努めていたとしても、内縁の妻又は夫が相続人となることはありません。それは、相続人となれるのは、被相続人の配偶者と、その一定の範囲内の血族と法律で定められているからです。
被相続人に法定相続人がいる場合には、内縁の妻又は夫は遺産分割協議に参加する権利すら有しませんから、被相続人が遺言書を残さない限り、内縁の妻又は夫が被相続人の相続財産の分与を受ける可能性は低いと言えます。
よって、被相続人が内縁の妻又は夫に相続財産の分与を行いたい場合には、遺言書に、その旨を認めておく必要があります。
なお、遺言書を作成する場合には、法定相続人が遺言書の通りに内縁の者に財産分与が行われるのを妨害する可能性がありますから、遺言書で遺言執行者も指定しておくとなお安心です。
特別縁故者に対する財産分与について
被相続人に法定相続人がいない場合又は法定相続人全員が相続放棄を行った場合には、内縁の妻又は夫は、被相続人が遺言書を認めていなかった場合でも、特別縁故者として相続財産の分与を受けることができる場合があります。
特別縁故者に対する財産分与の手続きについて
亡くなった被相続人に法定相続人がいない場合又は法定相続人全員が相続放棄を行った場合には、被相続人の相続財産は相続財産法人となり、利害関係人等の請求により、家庭裁判所が相続財産管理人の選任を行います。
家庭裁判所によって選任された相続財産管理人は、相続人がある場合にはその権利を主張すべき旨の公告や、被相続人の債権者であったもの(相続債権者)や被相続人から贈与を受けた者(受遺者)がいる場合には、その請求を申し出るべき旨の公告を一定期間行います。
この公告期間が満了しても相続財産に権利を主張する相続人が現れず、
かつ、相続債権者や受遺者に対する精算を行った後になお相続財産に残余がある場合には、内縁の妻又は夫のように被相続人に特別の縁故のあった者は、家庭裁判所に対して財産分与の請求を行うことができます。
被相続人に特別の縁故のあった者から財産分与の請求を受けた家庭裁判所は、その請求を相当と認める場合には、清算後の残余財産の全部又は一部をその特別縁故者に与えることができるとされています。この制度が利用できれば、内縁の妻又は夫であっても、被相続人の財産を譲り受けることができます。