普通借地権契約は、借地借家法により、借地権者に有利なものとなっています。しかし、その反面、地主にとっては不利となるため、地主の土地を貸し出しを阻害し、土地の有効活用を阻んでいるとの懸念がありました。そこで、創設されたのが定期借地権制度です。以下では、この制度について解説します。

普通借地権の特色について

普通借地権は、存続期間満了時点で借地上に借地権者の建物があれば、借地権者が存続期間の更新の請求をしたり、また、存続期間の満了後に土地の使用を継続している場合には、自動的に借地権契約が更新されたと見做す法定更新の規定がおかれています。

また、借地権の存続期間が満了し、その契約の更新がない場合には、借地権者は、借地権設定者に対して、借地上にある建物を時価で買い取るべきことを請求できます(建物買取請求権)。このように、通常の借地権については、借地権者に対して、借地借家法により手厚い保護が与えられています。

定期借地権が創設された理由について

普通借地権は、借地権者にとっては都合がよいですが、地主(借地権設定者)にとっては、一度借地権を設定すると、半永久的に借地権者に使用させることになるので、簡単には借地権を設定できないという結果になり、地主が借地権の設定をためらうことで、土地の有効活用を阻害しているとの指摘がされていました。

そこで、借地権の存続期間を更新しない旨や、存続期間を延長しない旨、契約終了時の借地権者の建物買取請求権の行使を認めない旨等の特約を付した借地権を設定できる制度が創設されました。そして、これが定期借地権制度です。

定期借地権の種類について

定期借地権は、借地借家法第22条から第25条において規定されています。それによると、定期借地権には主として以下の3種類に分類されます。
㈰一般定期借地権
㈪事業用定期借地権
㈫建物譲渡付借地権

一般定期借地権とは

一般定期借地権とは、存続期間を50年以上とし、㈰存続期間の延長をしない㈪契約の更新をしない㈫契約終了時に借地権者が借地上の建物の買取りを請求しない、という3つの特約を付した借地権契約のことを言います。なお、この契約は必ず公正証書で行う必要があります。

一般定期借地権契約で借地権を設定した場合には、契約期間が満了すると、借地権者は借地上の建物を取り壊して更地に戻したうえで、地主に借地を返還する必要があります。よって、地主は、返還の後の借地を別の目的に自由に利用できます。

事業用定期借地権について

事業用定期借地権とは、事業用の建物所有の目的で、存続期間を10年以上とし、㈰存続期間の延長をしない㈪契約の更新をしない㈫契約終了時に借地権者が借地上の建物の買取りを請求しない、という3つの特約を付した借地権契約のことを言います。この契約も公正証書により行う必要があります。

事業用定期借地権の大きな特徴は、建物所有の目的が事業に限るとしている点です。一般定期借地権は、建物所有が目的であれば、その建物の用途に制限はありませんが、事業用定期借地権は、事業用の建物所有が目的でなければ、設定できません。なお、この契約は、パチンコ店、コンビニ、介護施設等によく利用されます。

建物譲渡付借地権

建物譲渡付借地権とは、その存続期間を30年以上とし、借地権の存続期間満了時に、地主が借地上の建物を買い取る旨の特約を付した借地権契約のことをいいます。この契約は、公正証書によって行う必要はなく、口頭の契約でも成立します。

この借地権は、契約時点から30年以上経過後、借地権者から地主に対して借地上の建物が譲渡された時点で終了します。この契約の場合には、借地権者は、借地権終了時に借地上の建物を取り壊す必要はありません。また、新たな契約を結べば、その建物に従前の借地権者が住み続けることも可能です。

定期借地権と相続税対策

定期借地権が設定された土地は、普通借地権が設定された土地よりも、その相続財産評価が高くなります。それは、通常の借地権は一度設定すれば半永久的に継続すると考えられるのに対して、定期借地権は一定期間が経過すれば、借地権は消滅し土地は更地として戻ってくるので、その分財産価値が高いと考えられるからです。

しかし、定期借地権を設定すれば、土地の価額が下がることは間違いないので、将来の相続財産となる土地に定期借地権を設定しておけば、相続財産価額を引き下げて、相続税の節税につながります。その効果は、普通借地権を設定した場合よりも小さくなりますが、その分、将来更地で戻ってくるというメリットがあります。

相続税は早めに対応することで、大きく減税できる可能性があります。
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