相続による争いを避けるためには、遺言により遺産分割の割合や方法を定めておくことが有効です。
ただし、遺言により遺産分割の割合等を定めるにはいくつかの方法があり、また、その場合の注意点もあります。
今回は、遺言書における遺産分割の方法と注意点を説明いたします。
特定遺贈と包括遺贈
遺言に遺産分割の割合を定める方法には、特定遺贈と包括遺贈があります。
特定遺贈とは、例えば、被相続人の財産のうち、自動車を長男Aに、居住用の土地・建物を次男Bに、有価証券を三男Cに、といったように財産を特定して遺産分割の割合を定める方法です。
一方、包括遺贈とは、被相続人の全財産のうち、長男Aに1/2、次男Bに1/4、三男Cに1/4というように、包括的に遺産分割の割合を指定する遺贈の方法です。
包括遺贈と特定遺贈のメリット・デメリット
特定遺贈と包括遺贈の2つの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
特定遺贈のメリット
- 遺贈の対象となる財産が特定されているために、遺言の執行が容易である
- 借金などのマイナスの財産が遺贈の対象となることがない
特定遺贈のデメリット
- 遺言から相続開始までの財産構成の変化に対応できない
包括遺贈のメリット
- 遺贈から相続開始までの財産構成の変化に対する対応が容易
包括遺贈のデメリット
- 遺言の執行が容易ではない
- 被相続人の借金を引き継ぐリスクがある
全ての財産を他人に相続できるわけではない!
また、注意しなくてはいけない点として、すべての財産を赤の他人に相続できるわけではないことです。
法定相続人には、遺留分と言って、法定相続分の最低保障額があるからです。
この遺留分は、兄弟姉妹にはなく、配偶者、直系卑属(子や孫)、直系尊属(親や祖父母)が相続人になる場合にのみ認められます。
法定相続人の最低保障額
そして、この遺留分は本来の相続分の1/2です。
例えば、配偶者と子2人が法定相続人の場合、本来の法定相続分は配偶者1/2、子が各1/4づつですから、遺留分は、配偶者が1/2×1/2=1/4、子が各1/4×1/2=1/8となります。
遺留分を無視したら?
この遺留分を無視して、遺言による遺産相続の割合を指定しても、法定相続人から遺留分を主張された場合、その分につき、遺言は無効となります。
無駄な手続きを避けるためにも、遺言を作成する際には、法定相続人の遺留分を侵害しないように配慮しなくてはなりません。
遺言執行者を指定するススメ
なお、遺贈の対象者に法定相続人以外を含む場合、又は、遺言の執行を巡って法定相続人間でもめることが予想される場合には、遺言執行者を遺言で指定しておくことが勧められます。
信頼できる遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が公正な立場で遺言を執行しますから、遺言執行を巡るトラブルを防止できます。
まとめ
今回は、遺言書における遺産分割の方法と注意点を説明しました。
財産の量を指定する方法には、包括遺贈と特定遺贈の2方法がありました。
また、どんなことがあろうとも法定相続人には財産の一部は残さなくてはいけません。
そのようなことを注意した上で、遺言書の作成に移りましょう。