子どもに遺産を残したくないというような場合には、遺言書や死因贈与契約によって財産を相続人以外の者に寄付するという方法があります。
そこで、以下では、上記の場合のような、相続と寄付の関係について解説します。
寄付金控除とは
被相続人が生前に寄付をする場合には、一定の要件をみたすと、税制上の優遇措置を受けることができます。
以下のような団体に寄付をした場合には、寄付をした金額の一部または全部を、寄附金控除として、所得税の計算の基礎となる合計所得金額から控除することができます。
- 国又は地方公共団体に対する寄付金
- 公益社団法人、公益財団法人のうちの一定の団体に対する寄付金
- 独立行政法人、独立地方行政法人の一部に対する寄付金
- 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本赤十字社等に対する寄付金
- 社会福祉法人で要件を満たすものに対する寄付金
- 更生保護法人で要件を満たすものに対する寄付金
- 教育・科学振興、文化向上を目的とする特定公益信託に対する支出金
- 認定NPO法人で一定の要件を満たすものに対する寄付金
- 政治団体に対する寄付金のうち、一定のもの
- 特定新規中小会社による特定新規株式の取得に要した金額のうちに一定のもの
- 特定地域雇用等促進法人に対する寄付金のうちの一部
よって、上記の団体に対して寄付をした場合には、その金額を一部又は全部を、所得税の計算の際にその基礎となる合計所得金額から控除することができます。
寄付金控除の金額について
なお、寄附金控除の金額には上限が設けられており、その金額は次のとおりです。
イ その年に支出した寄付金控除の対象となる寄附金の支出合計額
ロ その年の総所得金額の40%相当額
イ及びロのうち、いずれか低いほうの金額が、寄附金控除の金額となります。
ここで、総所得金額とは、確定申告書別表第一第9欄に記載すべき、各種所得の合計額のことを指します。
準確定申告について
子どもに遺産を残したくない場合には、生前に、被相続人が寄付を行う方法がありますが、その場合に、寄附をした者が、その年の確定申告をする前に亡くなる場合があります。
そのケースでは、その相続人(相続人が複数ある場合には相続人全員で)が、亡くなった被相続人が行うべき確定申告を、被相続人に代わって行わなくてはなりません。
そして、その確定申告のことを準確定申告といいます。
この準確定申告の申告期限は、相続人が相続の開始があったことを知った日から起算して4か月以内となっています。
また、準確定申告の際に、亡くなった被相続人が寄付金控除の対象となる寄附金を行っていた場合には、その金額の控除を忘れないでしておく必要があります。
遺言や死因贈与によって寄付をした場合の相続税の取り扱いについて
寄付は、遺言や死因贈与によってもすることができます。
その場合には、寄附を受けた先が、相続税の課税対象者になるかどうかとい問題が起こります。
国や地方公共団体に対して寄付をした場合には、その寄附金には相続税が課税されません。
また、お寺など、持分の定めのない法人に対する寄付も、原則として、相続税が課税されません。
しかし、持分の定めのない法人に対するその寄付によって、被相続人の親族その他の特別の利害関係人の相続税の負担が不当に減少する結果になる場合があります。
そのような場合には、寄附を受けた持分の定めのない法人を相続人、寄附金を相続財産とみなして、相続税が課税される場合があります。
その他の法人等に対する寄付を行った場合には、原則として、寄附を受ける法人等を相続人、寄附財産を相続財産とみなして、それに対して相続税が課税されます。
相続人が相続財産の一部又は全部を寄付した場合について
相続人が、相続人の意思に基づいて、相続によって取得した財産の全部又は一部を、
- 国や地方公共団体
- 教育や科学の振興に著しく貢献していると認められる特定の法人
に寄付した場合には、その寄附財産を、相続税の非課税財産とすることができます。
また、教育や科学の振興に貢献することが著しいと認められる公益信託に支出した場合にも、その支出額を、相続税非課税とすることができます。
ただし、いずれの場合にも、寄附又は支出は、相続税の確定申告の期限までに行う必要があります。