遺贈とは、遺言によって、遺言者の財産の全部又は一部を相続人又はそれ以外の者に贈与することを言います。
一方、遺言と似たような法律行為に「死因贈与」というものがあります。
よって、以下では、これらの「遺言」と「死因贈与」の違いについて解説します。
遺言とは
遺言とは、遺言書で、被相続人の遺産の全部又は一部を他人に与えることをいいます。
遺言の相手方には制限がなく、相続人であってもそれ以外の者であっても構いません。
具体的には、Aが、A所有の土地甲は、Aの死後Bに遺贈する、という内容の遺言書を残していたとします。
その後、Aが亡くなり、その遺言書に基づいて、A所有の土地がBに贈与されることが遺贈となります。
死因贈与とは
死因贈与とは、人の死亡を原因として、贈与者から受贈者に財産の権利が移転することを言います。
具体的には、Aの生前に、AとBの間で、Aが死亡した場合には、A所有の甲土地をBに贈与する、という契約を締結していたとします。
そして、Aが亡くなった場合に、契約の効力が発生して、甲土地の権利がAからBに移転することを、死因贈与といいます。
遺贈と死因贈与の違いについて
遺贈は単独行為なので、受贈者(遺贈を受ける者)の承諾を必要としません。
受贈者は遺贈を放棄して、財産を受け取らないことはできますが、遺贈自体は、遺贈者が受贈者の意思にかかわらず、自由に行うことができますし、その撤回も自由です。
一方、死因贈与は、契約ですので、贈与者と受贈者の双方の合意が必要です。
よって、死因贈与によって財産を受ける者が承認しない場合には、契約は成立しません。
そして、遺贈と異なり、一度契約が成立すると、契約ですので、贈与者が自由に撤回することはできません。
不動産登記に関する違い
また、不動産登記に関しては、遺贈の場合、受贈者が相続人のケースでは、登録免許税額は贈与不動産の価額(千円未満切捨)に4/1,000乗じた価額(百円未満切捨)です。
遺贈の場合で、受贈者が相続人以外の場合には、その登録免許税額は贈与不動産の価額(千円未満切捨)に20/1,000乗じた価額(百円未満切捨)となります。
一方、死因贈与の場合には、受贈者が相続人である場合でも、その登録免許税額は、贈与不動産の価額(千円未満切捨)に20/1,000乗じた価額(百円未満切捨)です。
不動産取得税に関する違い
不動産取得税については、遺贈による不動産の取得の場合には、受贈者が相続人の場合には非課税扱いとなり、受贈者が相続人以外の場合には、土地の価額の4%が課税されます。
一方、死因贈与の場合には、受贈者が相続人でも相続人以外でも、取得した土地の価額の4%の不動産取得税が課税されます。
遺言書に関する違い
最後に、遺贈の場合には、民法で定められた一定の方式で遺言書を作成し、その遺言書の中で特定の財産を特定の者に贈与する旨を記載しなくてはなりません。
一方、死因贈与の場合には、その契約の方法について、法律上の定めは特にありませんので、当事者間で自由に契約することが可能です。
遺贈と死因贈与、それぞれのメリットとデメリット
遺贈のメリットとしては、受贈者が相続人となる場合には、贈与財産が不動産である場合の登録免許税や不動産取得税が軽減できる点になります。
一方、遺贈のデメリットとしては、受贈者が放棄する可能性を否定できず、その場合には、遺贈者の意思が実現できなくなる点などがあげられます。
死因贈与のメリットとしては、受贈者の承諾を得ての契約ですので、受贈者が財産の譲受を放棄する可能性が少なく、贈与者の意思を確実に実現ことがあげられます。
一方、そのデメリットとしては、贈与財産が不動産の場合には、登録免許税や不動産取得税が高額になる点があげられます。