相続登記の手続きは、登記手続きの中では比較的簡単な部類に入りますが、それでも結構複雑なので、事務系の作業が苦手だという方の場合には、代理人に手続きを依頼するということも考えられます。
そこで、以下では、この相続登記を代理人に依頼する際に必要になる委任状について解説します。
相続登記で使用する委任状について
不動産の相続登記に関する手続きを代理人によって行う場合には、委任状が必要となります。
この委任状については、法務局のHPからひな形が無料でダウンロードできますので、その内容を相続登記を行う方に合わせて修正したものをプリントアウトしたものを利用するのが、最も簡便で、間違いがありません。
この委任状には、相続登記の種類によっては、一部の相続人の実印の押印と印鑑証明書(発行後3ヵ月以内)の添付が必要になります。ちなみに、代理人による登記申請書には、代理人の認印を押印すればよく、相続登記を行う本人は印鑑を押す必要はありません。
相続登記の手続きを代理できる者について
報酬を得て事業として行わない場合には、代理人として相続登記手続きを行う者に制限はありません。
委任者が実印を押した委任状に記載されている者であれば、誰でも手続きを行なうことができます。
相続人の代表者が他の相続人を代表して代理人として相続登記を行うこともできますし、相続人以外の世話役的な親族が代理人となることも可能です。また、知人友人の中で信頼のおける者を代理人として手続きを行なうこともできます。
ただし、報酬を得て事業として他人の相続登記手続きを代理できる者は、司法書士と弁護士に限られています。
ちなみに、弁護士は、法律上は登記手続きを事業として代理できることになっていますが、弁護士で専門に登記手続きを代理することを業としているものは、ほとんどおりません。
相続登記の種類と委任状に押印する印鑑について
相続登記には、大別すると
①法定相続分によるもの
②遺産分割協議書によるもの
③遺言書によるもの
以上の3種類があります。
まず、①の法定相続分による相続登記をを司法書士等の専門家の代理人に依頼する場合には、委任状に押印する相続人全員の印鑑は実印である必要はありません。認印で結構です。
②の遺産分割協議書による相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合の委任状には、相続登記により新たに登記名義人となる相続人は認印の押印で大丈夫ですが、それ以外の相続人は、委任状に押印する印鑑は実印である必要があり、さらに、作成後3ヵ月以内の印鑑証明書を添付することが必要です。
③の遺言書による相続登記を司法書士に依頼する場合の委任状には、この相続登記で新たに登記名義人となる相続人は、認印の押印で大丈夫です。もちろん、印鑑証明書の添付も不要です。