相続が開始すると当然に相続人となる法定相続人には、一部の例外を除いて、孫は含まれません。
よって、遺産を孫に渡したい場合には、特別な手続きが必要になります。そこで、以下では、孫に遺産を残す方法について解説します。
孫は相続人とはならない
民法が定める法定相続人は、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹となっており、この中には、孫は含まれておりません。
例外として、被相続人が死亡して時点で、相続人である既に子が亡くなっており、その子に子(被相続人から見れば孫)がいる場合に、孫が子の代わりに相続人となります。
このことを代襲相続と言いますが、この代襲相続は、孫が死亡した子の代わりに相続人となるのであり、孫という資格で相続人となるわけではなく、被相続人より先に相続人である子が死亡するという特殊な場合にしか適用されない制度なので、一般的ではありません。
孫に遺産を承継させる方法
そこで、孫に遺産を承継させるには、通常の相続ではなく、特殊な方法を採用する必要があります。
そして、その方法としては①遺言書を利用する②孫を養子にする③孫を譲受人として生前贈与を行う、以上の3つが考えられます。
遺言書を利用する方法について
孫に遺産を承継させる方法の1つ目は、遺言書を利用する方法です。例えば「孫に甲不動産を遺贈する」というような遺言書を作成しておけば、遺産を孫に承継させることができます。
孫に遺産を承継させたい場合には、この方法が最も簡単な方法です。
ただし、法定相続人には遺留分がありますので、孫に承継させる財産は、法定相続人の遺留分を侵害しない範囲にとどめておかなくてはなりません。
また、遺留分とは関係なく、孫に財産を承継させることが、遺族間で争いの種にならないように注意しなくてはなりません。
孫を養子にする方法について
養子は法定相続人となることができます。よって、孫と養子縁組をすれば、その孫は養子となることができるので、通常の法定相続人として被相続人の遺産を相続することができます。
ただし、この方法は、子がいる場合には、子が孫養子に反対する可能性もあり、子の同意が得られる場合は別として、そうでない場合には、親族間の不和の原因となる可能性があります。
子にしてみれば、孫が兄弟になるわけですから、違和感を覚えるのは当然で、特別な事情でもない限りは、現実的な方法ということはできません。
孫に生前贈与を行う
相続時精算課税という制度があります。これは、60歳以上の方が、20歳以上の法定相続人又は孫に対して生前贈与を行う場合、2,500万円までを非課税、2,500万円を超える部分については一律20%で課税するという、贈与税の軽減制度のことをいいます。
この制度は孫への生前贈与にも適用されますから、孫に遺産を承継させたい場合には、この制度を利用すれば、贈与税をそれほど支払うことなく、目的を達することができます。
ただし、贈与者に相続が開始すると、この制度の対象となった財産は相続財産に含めなくてはなりませんので、その点は注意が必要です。